「ジョン」、は、
図書館勤務時代に書きました。小さいメモをエプロンのポケットに入れて、仕事の合間、ホコリでざらざらする本と本の隙間で思いついたことを書きとめ、行き詰まると、本を(なにしろ、本はいっぱいありますから)引っぱり出して、パッと目についた一説を引用したりして。
ですのでこれは、大したツギハギ掌編です。
片道2時間弱あった通勤時間、乗車中に本を読み切ってしまうことが何より恐ろしく、直前に飛び込んだ本屋で、お財布と相談の上、本を選ぶのですが、選びきれずにジリジリと時間だけが過ぎて行く……。この現象を、個人的に「本屋で遭難する」と呼んでいました。
そんな「遭難中」につかんだ一冊の文芸雑誌、『monkey business』に「四月*日〜六月*日生まれ」の原稿募集があり、中央線の中で「わたしも書いてみようかな」とふと思ったのが「ジョン」執筆のきっかけ。
条件があっていた、ってところがミソでしょう。
“ラビ”でパタパタと打って、印刷して、投函してから採用の連絡までだいぶ間があり、電話が来た時には間違い電話だと思っていました。
(なんども着信があったので)最初、けっこうつっけんどんな対応をしてしまい、「申し訳なかったな」といまだに思っている。
柴田元幸さんに選んでもらった作品、そしてデビュー作、ということで、筆者には特別な思い入れがあります。
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